Radeon RX480からRX6700XTへ(ベンチマーク・トラブル)

RX6700XTのパッケージ

ついにグラボを購入・交換したので、その過程とベンチマークをまとめました。
実施期間:2023年4月2日~4月8日

製品紹介

ASUS DUAL-RX6700XT-12G

グラボの価格変動を追っている人ならわかると思うが、製品によっては希望小売価格の2倍、3倍になっているものも存在する。
その中で、ASUSのRX6700XTは1年半近く価格データが存在せず、最近になっておよそ半額で流通しだした。(Fig1)

メーカーにはこだわらず価格の下がり具合で選ぼうかと思っていたが、図らずもASUSのDualの後継を手に入れることになった。

RX6700XTの価格推移グラフ(価格.com)
Fig1. RX6700XTの価格推移グラフ(価格.com)

RX6700XTの対抗馬はRTX3060Tiであり、PS5並のグラフィック性能を持っている。
VRAMは12GBで、最近のゲームタイトルでは8GBでも怪しいのでそれを見越してRX6600XTから狙いを変えることにした。

近年の流れではHDMI端子が1つ、DisplayPort端子が3つあるような組み合わせが多く感じる。
自分の環境ではメインモニターと液タブがHDMI、サブモニターがDVIでの接続だったため、最低でも一つはDisplayPortから変換する必要がある。

スペック・登場パーツ

OS:Windows10 64bit
CPU:AMD Ryzen5 3600
MEM:G’Skill F4-3200C16D-16GSXKB 8GBx2 (価格.com)
GPU:ASUS DUAL-RX6700XT-12G (価格.com)
電源:Corsair RM650x 2021 CP-9020198-JP (価格.com)

その他

旧GPU:ASUS DUAL-RX480-O4G (価格.com)
モニター1:BenQ GL2580HM (価格.com)
モニター2:Acer H223HQbmid (価格.com)
液晶タブレット:Wacom Cintiq 16 DTK1660K0D
DisplayPort – HDMI変換アダプタ:AINEX AMC-DPHDA
DisplayPort – HDMI変換ケーブル:Amazonベーシック DisplayPort to HDMI A/Mケーブル 0.9m ハイスピード (Amazon)
Nintendo Switch付属のHDMIケーブル

肯定的な買いたい理由

  • 人生には選択がつきものであり、どちらを選んでも必ず後悔する
  • 今のグラボRX480(2016年)では性能不足・BlenderのCycles(レイトレーシング)が利用できない
  • この1年ほど、RX480で毎日VRAMの使用量が増え続ける不具合に悩まされてきた(→未解決)
  • この以上の値下がりを期待するのが難しい
  • WQHDに対応するための先行投資
  • FF7Rがしたい(RX6700XTを購入する数日前にセールが終わっていた)

否定的な買わない理由

  • ミドル・ミドルハイクラスの価格が高い
  • 安い買い物ではない
  • 5,6月には台湾のイベント(COMPUTEX)が開催され、発表された新製品(7600等)が後日リリースされる噂
  • RX6700XTは2021年に発売されてから1年半も経っている

4月25日、関連情報が登場。
AMDがRadeon RX 7700とRX 7600を5月末に発表へ。価格設定は難航中の模様

購入した経緯

グラボを購入するには難しいタイミングだったと思う。
マイニング需要や半導体不足の影響で品薄・価格の高騰もあったし、グラボそのものの価格も上がっていた。
(RX480を2017年に税込¥19,800で購入した経験とはかなり感覚が変わっている。)

希望小売価格はRX6600XTが$349、RX6700XTが$479。
製品によっては為替レートで単純計算した数字よりも安くなっており、例えば今回のASUS社のRX6700XTでは1ドル130円だと6.3万。店舗価格は5.4万だった。
(購入から3週間。この製品の価格は維持されている。)

確かにグラボは値下がりの傾向にあるが、この先下がるかどうかわからないものを待つよりも決断して利益につなげるべきだと決断した。
RX7000番台をスキップして、4,5年は使うつもりでいる。

CorsairのRM650x

2022年のAmazonプライムデーで購入していた650Wの電源もようやく出番が来た。
当初は6600XTを狙っていたため650Wでは足りないと思っていたが、RX6700XTでも足りていたのは安心した。
(シングルレーン・マルチレーンについては勉強不足だったが、シングルレーンなのでPCIeのケーブルは二股になった1本で接続できる。)

開封と取り付け

内箱の蓋を開けると、グラボ本体を固定している紙製の枠が現れる。
これが思った以上に複雑な構造で、一度展開してみれば簡単なのだが、最初は図説を見ても難しかった。(Fig2)

RX6700XTの内箱
Fig2. RX6700XTの内箱

そして取り出したグラボがデカい。
30cmの長さがあり、RX480より5cm大きくなっている。当然重い。(Fig3)

RX480とRX6700XTのサイズ比較
Fig3. RX480とRX6700XTのサイズ比較

本体にはLEDのバーが一本あり、そこが紫に発光する。(色は変わらない)(Fig4)
うーん、かっこいい。
(Corsairの電源ケーブルの根本が固く、とてもじゃないがきれいに裏配線できない。)

RX6700XTを取り付けたPC内部
Fig4. RX6700XTを取り付けたPC内部

個人的なベンチマーク

比較対象は乗り換え前のASUSのRX480。
RX6700XTとは2倍近い性能差とされている。

RX480の時代には「AMDは電圧を盛っているから、電圧を減らしても充分な性能が出る」と言われていた。
それで電力制限を-40%で使用していたが、今回ベンチマークを回してみて、現行のタイトルでは単純にスコアが30~50%落ちるだけだと判明したので省略し、共通の設定としてチューニングはデフォルト(電力制限なし)のスコアを比較する。
(ここ数年は「電圧を減らす」または「消費電力を制限する」という主張を聞かないので、目的に応じたチューニングを設定するだけで充分なのだろう。)

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

FF14のベンチマーク結果
(C) SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

ファイナルファンタジーXIV_ 暁月のフィナーレ ベンチマーク

設定は最高品質で、仮想フルスクリーン。解像度は1920×1080。DX11。

RX480でのスコアは9693で、評価は「快適」。
平均FPSは67.25、最低FPSは37となった。
消費電力は100W。
温度は62~65℃で、戦闘シーンではファンの回転数が2200RPMを越え、非常にうるさかった。

RX6700XTでのスコアは17833で、評価は「非常に快適」。
平均FPSは132.98、最低FPSは44。AMD Software(旧Radeon Software)のインジケーターでは200FPSを越える瞬間もあった。
消費電力は80~180W。
温度は50~59℃で、ファン回転数は最大で2000RPM程度だったがそれでもうるさい。

PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator

PSO2NGSのベンチマーク結果
(C)SEGA 『PHANTASY STAR ONLINE 2』公式サイト

『PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator』|SEGA

設定は簡易グラフィック設定をウルトラ、推奨フルスクリーン(旧仮想フルスクリーン)。

RX480のスコアは2661
消費電力は80~100W。
温度は67℃前後。
ベンチマーク中のFPSは17~42程度。
ファンの回転数は1900RPM。

RX6700XTのスコアは10754
消費電力は80~160W。
温度は56℃前後。
ベンチマーク中のFPSは53~132、重そうなシーンでは70~100程度。
ファンの回転数は1900RPM。

一見負荷が高そうなエフェクトなのだが、他のタイトルと比べて消費電力と温度は低かった。

BLUE PROTOCOL Benchmark

BLUE PROTOCOLのベンチマーク結果
©2019 Bandai Namco Online Inc. ©2019 Bandai Namco Studios Inc.

ベンチマークソフト ダウンロード _ BLUE PROTOCOL

設定は最高画質で、仮想フルスクリーン。解像度は1920×1080。DX12。

RX480でのスコアは5954で、評価は「設定変更を推奨」。
平均FPSは42.75、最低FPSは9.5だった。
消費電力はほぼ100W。温度は58~61℃。
ファン回転数は2300RPM。言うまでもなくうるさい。

RX6700XTでのスコアは17787で、評価は「極めて快適」。
平均FPSは121.85、最低FPSは10.17。
消費電力は隙あらば180W。
温度は60℃ほどで持ちこたえる。
ファン回転数は2200RPM。

VRAM使用量が3つのベンチマークの中で初めて4.5GBを越えた(ベンチマーク前はWindows起動直後で350MB程度)。
さすがにVRAMが4GBのグラボでは最新タイトルを動かすのは厳しい時代に。

RX6700XTを使用した感想

RX480は、アイドル時の消費電力は24W、温度は37℃。
一方でRX6700XTはアイドル時・Youtube再生時でも10W以下、温度はファンが停止していながら30~35℃程度。
ファンが停止しているだけでなく、低電力で常用できることに感動している。

ただ、処理能力が向上した代償か、初めてのコイル鳴きに遭遇した。
ハイエンドではないが、どうも100W近くの働きをするとファンとは別のところで「ジジジ…」と音がする。
調べると、急激な電圧の上下を制御するために鳴るものらしい。
BlenderのCyclesでレイの計算をやり直すたびに異音がするのはもったいない減点。
コイル鳴きは仕様なので故障や不良品ではないが、スペックが高い・消費電力の多いグラボの宿命なのか。

TDP(≠消費電力)は230Wなのだが、実際には180W程度がMAXらしい。
(RX480はTDPが150Wでありながら、今回のベンチマークでもわかる通り100Wほどで動作するようになっている。)
重いゲームをやってこなかったから分からないが、さすがにゲーム本編でFPS制限を設ければ180Wで動作し続けることはないだろう。

番外:毎日VRAMの使用量が増え続けるトラブル

これは1年ほど前、RX480の時代から起きていたもの。
AMD Softwareのインジケーターでリソースを表示しているから気づけたが、毎日100MBほどVRAMの使用量が増え続ける。

VRAMはブラウザの動画再生などでハードウェアアクセラレーションが動くと使用されるが、RX480はVRAMが4GBしかなく、足りなくなると動画がカクつく。

メモリを開放する方法は、PCの再起動しかない。
RX6700XTはVRAMを12GB搭載しているが、意図せずに使用量が増え続けるのは気持ち悪い。

ソフト・アプリを終了したらメモリは開放してほしいのだが、期待通りの動きをしない。
グラボを交換したら解決してほしかったが、変わらなかったため、使用しているソフトに問題があるのだろうか。
VRAMの使用量が増え続ける問題は検索してもヒットせず、近い内容のものでは「ソフト側が未熟だから」という主張に留まっている。

基本的にPCを使わないときはスリープにしており、1週間以上は再起動しない使い方をしている。
このようなよくある使い方でVRAMの使用量が増え続けるなら、ネットにもっと情報があってもいいハズだ。

あれもこれもソフトは使わず、常駐ソフトなども無いので、普段使いしているブラウザのVivaldiか画像ビューワのXnViewMPのどちらかが怪しいのだろうか。(ゲームはしていなくても発生する。)

まだ手を出していないが、Radeonにはメモリビジュアライザー(Radeon Memory Visualizer (RMV))というソフトが存在する。
ゲーム開発でメモリリークをチェックするためのものらしいが、日本語情報が皆無のためずっと放置している。
これを使えば、何にVRAMが使われているのか分かるかもしれない。

番外:DisplayPort経由でモニター解像度がおかしいトラブル

一通りベンチマークを回したあと、サブモニターと液晶タブレットに拡張しようとDisplayPort端子を使用して接続したところ、解像度が異常だった。

DisplayPort端子にHDMIへの変換アダプタを刺して接続したところ、メイン・サブ・液晶タブレットのすべて(フルHD)において800×600ピクセル(または832×624ピクセル)で表示される。(Fig5)
そして解像度の変更ができない。
Windowsのディスプレイ設定ではこの解像度に選択肢はなく、AMD Software (旧Radeon Software)のディスプレイ情報でもこうなっていた。(Fig6)

Cintiq16の解像度が強制的に800x600に落とされる
Fig5. Cintiq16の解像度が強制的に800×600に落とされる
Windowsのディスプレイ設定
Fig7. Windowsのディスプレイ設定

すべてのDisplayPort端子、すべてのモニター、Nintendo Switch付属ののHDMIケーブルを用いた組み合わせでも症状は変わらない。
変換アダプタはグラボに挿しているから方向は間違っていないし、「DisplayPort信号をHDMIに変換するアクティブタイプ」「デュアルモード非対応でも動作」すると書いてあるのだから問題ないハズだった。
結論から言うと、これは家の環境では変換アダプタとの相性が悪かった。(Fig8)

左は変換アダプタ(異常)、右は変換ケーブル(正常)で接続したもの
Fig8. 左は変換アダプタ(異常)、右は変換ケーブル(正常)で接続したもの

最初は変換アダプタを購入した店舗に持ち込んで検証してもらい、自分も立ち会って展示機で動作が正常であることを確認したので、それが状況を複雑にさせることになった。

グラフィックドライバの再インストール、Windowsアップデートの適用など、調べた範囲で必要だと思ったことは試して、それでもダメだったため今度はグラボを持ち込んだ。
当然ながら動作は正常。
こちらとしては故障でないなら引き取るしかないのだが、同情されたのか、初期不良として交換してもらえることになった。
変換アダプタが正常だったという結果から、これでも改善しなければ自分のPCが原因という理屈に絞り込まれた。

悪い予想の通り、グラボを付け替えても症状は改善しなかった。
変換アダプタの相性が悪かったという結論から詳細な過程は省きたいが、調べて試した方法はどれもダメだった。
メインモニターのドライバを入れても変わらず。
グラフィックドライバはAMD CleanUP Utilityで完全削除・再インストールをしてもダメ。
Windowsアップデートを最新に保っても意味無し。
マザーボードのチップセットも更新し、これでもダメ。
残されたのは、BiosのアップデートとOSの再インストール。

しかし、それでは解決しないだろうとも薄々感じていた。
OSの再インストールは1月にしたばかりで、そもそも「DisplayPort端子を使用して解像度がおかしくなる」という原因が不明のままOSの再インストールをしても後始末が大変なだけ。
マザーボードのBiosアップデートもリスクが伴う。

付け加えれば、「つなぐだけで動作するものが、こんなに複雑な問題になる方がおかしい」とも思った。
考えてみてほしい。
DisplayPort端子で接続するためにドライバや設定が正しい必要があるなら、世界中でトラブルが発生し、ネットに情報があるハズだ。
それがほとんどなかった。
海外の掲示板に投稿された1件は、原因も解決策も不明なままスレッドが閉じるような、そういうものしかない。

となると、やはり怪しいのは変換アダプタになる。
DisplayPortを使用して一切映らないならまだしも、画面には出力できているのだから、モニターの情報(名前、解像度、リフレッシュレートなど)が正しく伝わっていないとしか考えられない。
というわけで、Amazonベーシックの安物の変換ケーブル(アダプタではない)を注文し、3日後に到着。
これを使ったらあっさり解決した。

というわけで、偶然が重なりトラブルが発生し、このような結果になった。
グラボのHDMI端子が2つ以上あれば。
DisplayPort端子を持ったモニターを所持していたら。
店で変換アダプタではなく変換ケーブルを見つけていたら。
精神的にも肉体的にもエネルギーを浪費せずに済んだかもしれない。

3千円もしたアダプタは、どこかで出番があるかもしれないし、無いかもしれない。

終わりに

6年ぶりのグラボの更新・決断には概ね満足している。
できることが増えるのは大きい。
価格についてはマイニング需要や円安で酷いことになっていたが、それらと比べるとずっとマシだろう。
グラボが高いという印象は変わらないが、今は外的要因よりもグラボそのものが性能の向上や半導体の都合で仕方なく高価になっていると言える。
(さすがにハイエンドで30万とか40万はぶっ飛んでいるとしか言いようがないが、ミドルクラスについては充分あり。)

フルHDかつ60Hzモニターだから充分すぎるのは当然として、WQHDや100Hz以上のモニターでも通用するレベルだと期待して先行投資した。
5年は使うと思えばもとは取れるだろう。

故障していないグラボを交換してもらったのは、商品価値を下げたという罪悪感があるが、その判断を下したのは店側なので思い詰めても仕方ない。俺はマジメすぎ。

Amazonの変換ケーブルは何も考えずに90センチメートルのものを購入したが、この長さだとPCの隣のモニターが精一杯。
良い子は180センチメートルのものを買おう。