【失敗談】Vtuber・VRChat用の3Dモデル製作で挫折するまでの記録 | 内向型人間の知恵ブログ

【失敗談】Vtuber・VRChat用の3Dモデル製作で挫折するまでの記録

サムネイル:モデリングした自作キャラ

2017年12月下旬に始まったVtuberブーム。
現在でもその人数は増え続けています。

バーチャル美少女受肉」を夢見て、モデリングに手を出した人は、私だけではないでしょう。

この記事は、その賑やかさに憧れた私が、3Dアバターを作っていた「2018年3月から6月」までの流れをまとめたものです。
「どこでつまづいた」
「これで間違えた」
「こうしておけば良かった」などの反省も残しています。

準備という最初の一歩

3ヶ月もの間Vtuber・VRChatの動画を消費し続けた私は、ようやく重い腰を上げました。

「自分も、自分だけのアバターを持ちたい」

3D製作は大学の講義で扱いましたが、それでも初歩中の初歩。
今回のように熱意があるわけではありませんでした。

そんなとき、モデリングソフト「Blender」の講座かつ、「VRChat用途」の動画を見つけました。

「新しいことを始めることへの抵抗」を乗り越え、動画に沿って操作方法を真似しました。
これが、3月上旬の話。

ただ、本格的に作業を始めるには、キャラデザの下絵が必要でした。

おおよその外見(髪型や衣装)と、正面と横から見た絵。
髪型や髪色は、すでに某ゲームのアバターとして使っていた理想があったのですが、自分で衣装を考えるのはホントに頭を抱えた。
服飾なんてやったことがない。
しかも、決断できない完璧主義者。

いろんなアニメやゲームのキャラデザを見ましたが、完璧主義がゆえに満足できるものはなく、とりあえずは体から作るわけだし、暫定という形で描き上げました。(Fig1)

Fig1.キャラデザの最初のラフイメージ
Fig1.キャラデザの最初のラフイメージ

こちらがモデリング時に使う下絵。(Fig2)
左右対称具合は鏡像ツールで描いてます。
これで、Blenderで作業を始められるようになりました。

Fig2.正面と横から見た下絵
Fig2.正面と横から見た下絵

 

順調だった頃( ~11日目)

▼3日目 (3/19)
多くのモデリング講座では、まずは人間の顔。
動画の講座を頼りに、鼻と眉間の間から作り始めます。
そこから目のまわり、口、頬へと広げていくことになります。

このやり方ならね。(伏線)

講座のメッシュ(面の集まり)と見比べながら、おぼつかない操作で作ったものがコチラ。

隠れてますけど、アゴの裏がホントに難しい。
そこから首につなげるなんて。

5回やり直して、まぁ納得する出来になりましたが、やはり時間をかけすぎてた。
完璧主義かつ、安心できる納得が得られるまでは、霧の中をさまよう感覚。
 

▼6日目 (3/21)
最初のつまづきポイント
「モディファイア」と変形処理。

人間の体は基本的に左右対称なので、ミラーで作ります。
女性の胸は半球から作成しますが、「釣り鐘型」など、絶妙な形を変形機能で実現します。
ですが、ミラーを無視して変形したため、操作があっているのか不安になりました。

NOTE:変形のプレビューを確定すると、結果がミラーに反映されて自然な胸になります。


 

▼7日目 (3/22)

胴体の形が見えてきました。
この辺りから、メッシュのパズルに頭を悩ませ始めます。
碁盤の目のように単純のものではなくなり、「流れ」を意識する必要が出てきました。
(これをトポロジー(topology)という。)

見様見真似で肩・肩甲骨を作ったものがコチラ。(Fig3)
注目したいのは、面の角度や大きさで流れが生まれること。
そして、すぐ隣に格子状のメッシュが並ぶことです。
まったくの未経験だと、慣れるまで難しいポイント。

Fig3.肩甲骨のメッシュの流れ

素人にありがちな「碁盤の目」と、プロのトポロジーにはかなりの差があります。
一例として、「ミライアカリ」モデルのメッシュを見てみましょう(Fig4)

まったく無駄がない。
こういうクオリティの高いモデルを作りたかった。

Fig4.「ミライアカリ」モデルのポリゴン
Fig4.「ミライアカリ」モデルのポリゴン

 

▼8日目 (3/23)

おしり。
ここで気づく。
「後ろ姿の下絵がないやん!」

シルエットは前面の下絵と同じなので、どうにかなりましたが。
ここまでのモデリングは、輪郭を見ていれば作れるものでした。
ただ、割れ目で奥まっている部分は、下絵にもない「見えない」箇所になります。

NOTE:ミラーを一時的にオフにして、断面のラインを追うことで作れます。
(背中の中心の凹み具合にも有効。)

 

▼10日目 (3/25)
手。
つまづきポイント2

ここまで、大きく傾いたものを作ってはいませんでした。
顔も胴体も、Z軸に沿っています。
メッシュを貼る方向と軸が一致していると作りやすいのです。

ですが、Aスタンスの下絵で手を作ろうとすると、基準のない角度にメッシュを延長することになります。
クッソめんどい

なので、ここで下絵にTスタンスを追加。(Fig5)
「Aスタンスは自然な姿勢」
「Tスタンスは肩が上がるので注意が必要」らしいですが、とりあえずは頭に入れておいてTスタンスで作ります。
Y軸方向に沿っているので、圧倒的に作りやすい。
(それでもAスタンスにこだわるなら、Y軸に沿って作ったものを回転させてあげれば良さそう)

Fig5.Aスタンスの下絵にTスタンスを追加

おかげで、腕の製作はY軸に筒状のメッシュを伸ばすことで、楽に進行。


 

徐々に苦しくなる髪や衣装作り( ~31日目)

▼14日目 (3/29)
白目、瞳、まつ毛、眉毛を作成。
マテリアルに色をつけて、一気に顔らしさが生まれた。
(実際は、マテリアルではなくテクスチャで着色?)

この辺りから、人によって作り方が変わってきます。
例えば、現実では眼球は球体です。
映画など、現実に近い生物は、同じように眼球を作成する場合があります。

ですが、瞳の表現方法はこれに限りません。
白目は奥まった空間で表現し、お盆のような凹んだ板状のポリゴンを瞳にしています。
簡単に作れるとか、「デフォルメのキャラクターは眼球がデカイから」、という理由もあるでしょう。

一度、どのような違いがあるのか調べておくといいでしょう。
【外部リンク】MMDモデルの目の構造について(備忘録)_ギン@砂Pのブロマガ – ブロマガ
 

選択肢の多さは、自由であるとも言えます。
ですが、右も左もわからない初心者・素人だと(さらに完璧主義者だと)、どのように進めばいいのか迷う原因にもなります。
訊ける人がいれば、それが一番の近道だと思います。
 

▼19日目 (4/4)
ポニーテールなので、大きく分けて前髪・後頭部・ポニー部分にわけました。
髪の房(ふさ)を一つずつ作っていますが、さらにここから「切れ目を入れて、一つの塊にします」。
……活字じゃなんのことかわかりませんね。
ココ、挫折しました
ここから1週間近く粘りましたが、早く作り上げたかったので、個別に作った房はそのまま結合して、ひとカタマリにしました(なげやり)。

やろうとしていた一連の手順は、こちらのページを読んでください。
メタセコイアの講座なのでBlenderとは操作が異なる点があります。
【外部リンク】[4] 前髪の重なり調整 – 第10回 前髪のモデリング – 3Dでキャラクターを作ってみよう! – Metasequoia 使い方講座 – CLIP STUDIO _ 創作応援サイト


 

また、これまでの造形は、面の一枚一枚がわかるものでした。
今回のスクリーンショットは、お肌がなめらかですよね?
対して、髪は面の集まりなのがよくわかります。

これはBlender上で、オブジェクトごとに表示方法を切り替えることで実現できます。
最初に知りたかったな。


 

▼20日目 (4/5)
胴体ができたので、インナーの製作に入りました。
(ツイートしてなかったけど、脚は完成してました)
戦う衣装の設定なので、スパッツです。

初心者向けの講座だと、衣装は体のメッシュから盛り上げて作る場合があります。
服は、基本的には体と同じ形をしていますから。
だから、すべての服を作りこむ必要はなく、「まったく見えない部分は無視する」ことができます。

ですが、完璧主義で凝り性の私は、某PSO2のシステムを真似て、「重ね着」ができるようにしたかったんです。
一応コチラにもメリットはあって、体のメッシュを直接いじらないため、「着せ替え」が出来るようになります。
まぁ、モデリングの素人なのに遠くを見過ぎだと。

……。
…。

で、スパッツの形に近いメッシュを複製して、「シュリンクラップ」という処理で体に密着させることになりました。
ベッコベコですけど。

正直、原因もわからず、「密着しねぇじゃねぇか!」という気持ちでいっぱいでした。
これについては、「スパッツの形をした立体」を慎重に体のラインに合わせることで完成しました。
お世話になった動画はコチラ↓。


 

▼23日目 (4/8)

上下のインナーが完成。
ブラの部分は、ホルターネックか、背中を覆うスポブラタイプかで2種類作ったりしてました。
(最初に決めとけ。)

まる一日、チクチクと頂点を動かしてなめらかになるように調整する日もあったりして、工程としてはまったく進まないことも。

技術的な話をすると、色や模様をつける「テクスチャ」、モデルを動かすために「ボーン」、表情の変化をつける「モーフ」がまだ残っています。
ここまでのBlenderの操作や知識だけでなく、ゲームエンジン「Unity」の利用も待ち構えていて、開始直後の希望や熱意に隠れた不安が膨らみ始めました


 

▼31日目 (4/16)

最初のラフイメージとはだいぶ変わりました。
この2日前に、もっと作れそうなものを、と他の案の考えていました。(Fig6)

Fig6.変更を加えたキャラデザ
Fig6.変更を加えたキャラデザ

それっぽい出来にはなりましたが、やっぱり目指していたものと違う。
時間をかけたのに、ボツにしたい気持ちと揺れ動いていました。

とりあえず、先に進むことを優先して、テクスチャの作業に移ることに。
(ここでの色や模様はマテリアル(材質)として設定しているので、目標としては間違っています。)
 

行き詰まるUV展開と挫折( ~46日目)

▼33日目 (4/18)
テクスチャの模様は、モデリングに興味があれば、どこかで見たことがあるでしょう。
(ゲームの裏話的なところで出てきたりします。)

ユーザとして体験する機会があるとしたら……、Minecraftはわかりやすい。
立方体に貼り付けるテクスチャの違いで、土や石、砂、ダイヤブロックなどバリエーションが増える。

「どうぶつの森」の仕立屋さんで作った正方形のデザインを、服やカサに貼り付けるのもそうだ。。
丸みのあるものに貼り付けると、絵が崩れたりする。
【外部リンク】#テクスチャでモデルは化ける まとめ – Togetter

閑話休題。
 

テクスチャに模様を描く前に、造形の展開図を用意します。
これをUV展開といいます。
(展開する先の平面画像をUVマップという)
(UVとは、3次元におけるXYZの関係。学校教育では平面はXYで表現するから、なじみがないかも)

展開図といえば、サイコロ。
あらかじめサイコロの「ヒラキ」があれば、1から6の模様を描く場所がわかりますよね?
イメージとしては、それと同じことをする。

で。
顔のようなメッシュの集まりを展開するのは、クッソムズい
いや、UV展開そのものが、Blenderの挙動も含めて意味不明。

講座を見ても、なーんかすんなりやってて、置いていかれる感じ。
そこが詳しく知りたいんだけど

どうなったかと言うと、名前のないトラブルに直面しました。

まだ肌のマテリアルがそのままですが、とりあえず顔の部分をUV展開することに。
すると、意味不明は白い正方形が。
頂点を動かすと、何重にもかさなっているようで、終わりがない。
なんだこれは

厄介なのは、この展開した頂点の集まりだけを削除できないこと。
やり直すためには、このUVマップを破棄する必要がある。

「白い正方形は閉じたメッシュがどーのこーの」
どうやって対処したか憶えてない。
重複した頂点を見なおしたりしたんじゃないかな。

でもトラブルは続く。

複雑な造形を、一度に展開しようとするのは、無謀に見える。
だから、シーム(赤い線)で切って、部分的に進めようとした。

NOTE:「シームレス」の方が聞き馴染みがあると思う。
ゲームでは「フィールドマップとバトルシーンが”シームレス”」とか、「縫い目のない(seamがless)」意味で使う。

これまでコンピュータを使ってきて、その「普通」で考えれば、「未選択のものには処理を適用しない」ハズだ。
顔の前面だけを選択しているのだから、UVマップには「顔の展開図だけ」が表示されるハズなのだ。
なのに、まったく他所の頂点がマップに表示されている。
なんだこれは(二度目)

講座をググりまくっても書いてない。
名前がない。
頭痛にイライラしながら、ずっと検索し続けた。
(こういうときのために、訊ける人の存在は大きい。)

結論としては、「ポリゴンのすべての頂点はマップに展開されていて、必要な箇所がヒラキになっている」ということで良さそう。
正体はわかったが、かなり疲弊していて、「登り始めた山の険しさ」が徐々に身に沁みてきていた。
 

▼34日目 (4/19)
「自分で作るしかない」「作れる自分に意味がある」と始めたモデリング熱を脅かすニュースが登場した。

もともとはアダルトゲームだが、そのキャラクタークリエイトの豊富さをアバターとして利用可能で、しかもちゃんと動かせる。
モデリングができない人や、トークが優れていて「皮(ガワ)」さえがあれば……という人には朗報だっただろう。

ビジネスの秘訣の一つは、「誰もやりたがらないことをする」ことにある。
そうしてツールが開発され、手間が減ったり、あるいは借りてくるだけでいいとか、世の中は便利になってきた。

だけど、自信のない私には、頑張っていることが認められなくなる可能性にしか見えなかった。
毎日6〜10時間の作業が、まったくの無駄になることが怖かった。

孤立していると、企業にも嫉妬するようになってくる。「プロに勝てるわけないじゃないか」、と。)


 

▼38日目 (4/23)
UV展開が進まず、どれだけ調べても納得のいく講座は見つからず、モチベーションは低下は絶望に変わっていた。
(完璧主義は、「出来そうだ」と思えるくらい情報を補強しなければ動けない。)

4日後に書籍を買ったが、自分が作っためちゃくちゃなポリゴンと比較して落ち込む。
また、ポリゴンの多さがUV展開を複雑にしていると気付き、作りなおすことが受け入れられず、ついに挫折。

追い打ちをかけるように、Vtuberが2000人を突破したニュースが発表された。

「自分なんて、いなくても誰も困らないんじゃないか」
 

熱意と不満の逆転( ~85日目)

▼66日目 (5/21)

その後も、悪あがきのように、たまにはググるも……成果はなし。

そもそも、ここまで2ヶ月かかっているが、手順が明確ならもう2週間。
訊ける人がいれば、さらに2週間は短縮できただろう。
 

▼81日目 (6/5)
不満爆発。
かつての熱意は姿を消し、喪失感だけが残った。

少し前までは、「100時間以上かけたのに無駄になった。やり直すのもつらい」とトラウマになっていました。
最近になって「作りなおしてもいいな」と思えるようにはなったが、抱えているものがどれも進まない状況。
どうすればいいのか、ずっと頭を抱えている。
 

【終】発見や反省など。言いたいこと

反省)全体から作れ

何かものを作るとき、まずは大まかな形をとることは重要だ。
細部はあとでやる。
それを絵を描くことから理解しているハズだった。

きっかけは、一つの動画だった。
見た瞬間に思った。

こっちのほうが簡単じゃん

まずは、「どこまで」という範囲を把握しなくちゃあいけない。
鼻筋から、頭、首、胴、手、脚……。
一つ一つ仕上げながら進むから、クオリティにバラつきが出る。
噛み合わなくなる箇所が出てくる。

メッシュを延長するのではなく、あとから細かくすること。
「どのくらいの細かさで作ればいいのかわからない」という疑問が、なめらかさを求めた結果、雑多なポリゴンになってしまった。
 

言いたいこと)もっと詳しくて優しい講座が欲しい

モデリングと一口に言っても、その用途は多岐にわたる。
今回のようなアバター以外にも、ゲーム用、フィギュア用。
動物や静物など必要な知識量が問われる。

その中でもVRChatは歴史が浅い。
生まれたばかりだ。

処理落ちしないためにも、VRChatに適したモデリングというものは存在する。
久しぶりに見たら、日本wikiの内容も以前より充実した感じだが、まだ足りない。

とにもかくにも、「VRChat用途のモデリング講座」は、まだまだ未熟だ。
MMDのモデルが雰囲気としては近いが、その講座も役に立ったとは言えない。

「調べてもわからない」をいかに解消するかが、講座の存在意義だと思う。

難しい話だとは思うが、もっと広く、深くあってほしい。
リアルとデフォルメ、ローポリとハイポリ。
例えば、今回「重ね着」と「着せ替え」ができるようにアプローチしたが、講座としては「体と衣装が一体化したもの」のどちらも見捨てずに解説してもらいたい。
UV展開のシームの目安だって、あってもいいハズだ。
(俺だって、できるなら書いてる)

「コレ、俺が書いたほうが絶対役に立つでしょ」というネタが生まれたら、そのときはまた書こう。